2010年3月12日Vol.185山口県広報広聴課

おもしろ山口学

全国初!貴重なカイガラアマノリの増殖と製品化に成功

冬の夜、潮が最もひいた山口湾の干潟でカイガラアマノリを収穫冬の夜、潮が最もひいた山口湾の干潟でカイガラアマノリを収穫

 山口県椹野川(ふしのがわ)の河口、豊かな干潟が広がる瀬戸内海の山口湾は、カブトガニ(※1)をはじめ、さまざまな希少生物が生息しています。幻のノリと呼ばれる赤紫色の「カイガラアマノリ」も山口湾で確認され、このカイガラアマノリを全国で初めて増殖・製品化した「紅(べに)きらら」が、その希少さとおいしさから今、話題となっています。
製品化のきっかけは山口県水産研究センターの研究員が、地元の人から、山口湾には、名前の分からない赤いノリがあり、拾って三杯酢(※2)などにして食べている、と聞いたことでした。調べた結果、それが限られた場所にしか生息していない環境省のレッドデータブックで絶滅危惧(きぐ)種I類(※3)に分類され、山口県のほかには千葉県と広島県でしか確認されていないカイガラアマノリであることが1997(平成9)年に確認されました。また、非常においしかったことから、研究センターでは、カイガラアマノリを保全するとともに、山口湾の環境の良さのPRや、特産品の開発といった地域貢献も兼ねて増殖・製品化を研究することにしました。
一般的なノリの養殖は、ノリの胞子を放出するカキ殻を網に取り付け、カキ殻から海中に放出された胞子がノリ網に付着し、葉体(※4)が数十センチまで成長したら機械を使って収穫するという方法で行われます。一方、カイガラアマノリはカキ殻などの貝殻から胞子を海中に放出せず、貝殻から直接葉体が発芽・成長します。そこで、この特徴に適した増殖手法を試験研究し、さらに風味を損なわないように天日で干して仕上げる高級な「バラ干し」(※5)としての製品化を目指しました。そして、研究センターの指導を受けた地元漁業者の手によって、2009(平成21)年3月に紅きららとして世に出たのでした。
カイガラアマノリには、アラニンという甘み系のアミノ酸が通常のノリの2倍以上含まれているため、製品化された紅きららも甘みの強さや彩りの良さから人気を呼んでいます。
  近年、山口湾のように周辺に幾つもの大きな干潟が残された環境には、希少種が生き残りやすいことが分かりました。紅きららの誕生によって、山口湾の環境は今、注目を集め始めています。

  • ※1 背面全体が甲羅で覆われ、剣状の尾剣(びけん)を持つ節足動物。数億年前からの形態を残し、「生きている化石」と呼ばれる。
  • ※2 酢・しょうゆ・みりんで和(あ)えた酢のもの。
  • ※3 極めて絶滅の危険が高い生物。カブトガニも絶滅危惧種I類に分類。
  • ※4 ノリの胞子から発芽し、成長したもの。
  • ※5 摘み取ったノリを、すのこに板状に広げず、そのまま乾燥させたもの。風味や歯触りの良さを楽しめる。