2009年12月25日Vol.180山口県広報広聴課

おもしろ山口学

小林和作とふるさと秋穂[後編]

春の海(山口県立美術館所蔵)
春の海(山口県立美術館所蔵)

 秋穂(あいお)村大海(おおみ)(現在の山口市秋穂大海)生まれの画家、故・小林和作 (こばやし わさく)。広島県尾道市に転居してからも、ふるさとを忘れてはいませんでした。敬老の日には、お年寄りたちに紅白の大きなもちやまんじゅうを長年贈り続けたり、公共施設や神社に多額の寄付を行ったりして、ふるさと秋穂を支え、1964(昭和39)年には、秋穂町(当時)の名誉町民となりました。1967(昭和42)年には、奨学金として秋穂町に300万円を寄付。和作は人のために尽くしてもそれが公になることを好まなかった人で、この時も「小林奨学資金という名称でなく、他の名前を」と申し出ています。
 1971(昭和46)年に帰郷した際には、国民宿舎「秋穂荘(現在は、あいお荘)」で地域の人たちによる歓迎会が催されました。その時、沖の「竹島(たけしま)」をスケッチするため船が出され、和作は船上で30分ほど写生しています。1974(昭和49)年10月、和作は「独立展(※1)」に油絵「春の海」を出品。岩礁や岬を海から描いた、その作品が、3年前に帰郷した際、船上から眺めた岩屋の鼻(※2)の風景をもとに油絵として制作したものではと言われています。そして独立展の翌月、和作は尾道からスケッチ旅行に出掛け、不慮の事故でこの世を去ります。享年86歳。全国各地を旅して風景画を描いた画家の最後の出品作が、くしくもふるさとの海を描いたものとなったのでした。
 その後、和作の油絵などとともに、生前収集していた梅原龍三郎(うめはら りゅうざぶろう)らさまざまな画家の作品「小林和作コレクション」が遺族から山口県に寄贈され、1979(昭和54)年に開館した山口県立美術館には、小林和作室が設けられました。
 また、あいお荘には現在、和作の作品や絵具箱、愛用した背広などを展示する「和作の部屋」が設けられています。そして、その廊下には、和作がかつてその育成を願って買い上げた画家たちの数々の作品。秋穂の海の素晴らしい眺望を楽しみに訪れる人々を、和作は今も、あふれる色彩の絵画を通じて楽しませ続けています。

  • ※1 1930(昭和5)年創立「独立美術協会」が毎年開催する展覧会。和作も会員だった。
  • ※2 山口湾に伸びた岬の突端。

参考文献
『小林和作 その生涯と作品』(小林和作頌徳会編集発行)、『秋穂町誌』(秋穂町発行)、『山口県の美術』(榎本徹編、思文閣出版発行)など