コンテンツ2008年4月25日Vol.140 山口県広報広聴課

おもしろ山口学

中也の帽子 著/福田 百合子(中原中也記念館 館長)

中原中也
 詩人・中原中也(なかはら ちゅうや)といえば、帽子をかぶって、つぶらな瞳でこちらを見つめている写真を思い出される人が多いことでしょう。少し愁いを帯びて、頬にかかる長髪が影となって青春像の象徴のように印象深い一枚です。
 この写真は中也18歳、恋人長谷川泰子(はせがわ やすこ)と共に上京して間もない頃、銀座の有賀(ありが)写真館で撮影されました。初めての東京、詩人として出発点に立とうとする心意気。不安と高揚が、帽子とその下にある顔から、マントを着た肩へかけての線に、立ちのぼってくるようです。
 帽子というのは人間の頭に乗っかる冠であって、威儀(いぎ)を正すとか、儀礼的とか、なんとなく改まった感じを受けるものです。大正末期から昭和初期の日本では、西洋文化が定着し始めたとはいっても、帽子をかぶっての肖像写真にはやはり特別な思い入れがあったに違いありません。
 中也の帽子は当時でも高級生地のソフト帽だったようです。本来は山高帽と呼ばれて形の整ったものを、中也はわざと低目につぶして着用しています。リボンの内側に折り込んだのではないかとの説もあって、芸術家風な新鮮味をねらったのかも知れません。
 フランスの詩人・ランボーの肖像画をベルレーヌは、帽子とパイプとマントで特徴的に描きました。ランボーの詩を翻訳し、その影響も受けた中也は、帽子に長髪とマントでランボーを気取ったのでしょうか。
 日本の近代を新しく生きようとする若者の生涯を凝縮したような中也の帽子の写真です。



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