コンテンツ2007年5月25日Vol.118 山口県広報広聴課

県庁職場訪問-ちえみとゆかりのおじゃまします-
乗安さん  山口県には数多くの遺跡があります。昨年度の発掘調査では、美祢市の下村(しもむら)遺跡から、“国内最古級”の弥生時代の絵が描かれた土器が出土しました。しかも、その調査からはとても興味深いことが分かってきたとのこと。「山口県埋蔵文化財センター」所長の乗安和二三(のりやす かずふみ)さんに話を伺ってきました!
ゆかり
[ゆかり]美祢市の下村遺跡からシカとみられる絵が描かれた弥生時代の土器の破片が見つかったそうですね?下村遺跡ってどんな遺跡なのですか?
下村遺跡全景/※クリックで拡大します。
[乗安さん]美祢市役所の南、市役所のある平地より約10メートルほど小高い丘の上にある弥生時代の中期の初頭(紀元前3世紀前後)の村の跡です。これがその全景写真なんですよ。
ノブ
[ノブ]先生、この写真で丸く見えるのは竪穴住居の跡ですね?
ゆかり
[ゆかり]ノブさん、スゴイ!どうして分かったんですか?
ノブ
[ノブ]あのー、実は学生時代、考古学を専攻していまして…。
ゆかり
[ゆかり]えーっ、そうだったんですか!!じゃ、興味津々でしょう?
ノブ
[ノブ]うん!ものすごく!!先生、このもっと小さな穴は?
“国内最古級”の弥生絵画土器
[乗安さん]それは貯蔵穴。地面を掘ってつくった開口部・深さともに1から2メートルの穴の中に、食料を入れたつぼを収納していたようです。ごみを捨てた穴もたくさん見つかり、そうした穴の中からシカが描かれた土器の破片が見つかったのです。これがその写真です。上の方にあるのがシカの絵(5本の弧線とその外側の孤線からのびる2本1組の直線2組)、体の部分です。残念ながら、シカの頭の部分が描かれた土器の破片は見つかっていないんです。
ゆかり
[ゆかり]あのー、スミマセン。どうしてこれでシカだと分かるんでしょうか?
拡大写真
[乗安さん]ハハハ!そう思われるでしょうね。最初は、幾何学的に描かれる紋様の一部という見方もあったんです。でも、一般的な紋様のパターンに当てはまらない。しかも、よく見ると2本ずつ計4本の直線がある。とすると、これは4本足の動物なんじゃないか。となると、ほとんどシカしか考えられない。
ゆかり
[ゆかり]ん…?「シカしか考えられない」って?
[乗安さん]ほかの遺跡から出土した絵画を参考にした上でのことです。それらに描かれているシカの描き方と同じなんですよ。また、弥生時代の土器には、シカの他にも、犬や馬か?といわれるものも描かれてはいるんですが、動物の絵画は圧倒的にシカが多いんです。
ゆかり
[ゆかり]へーっ!圧倒的にシカが多いって何かワケでもあるんですか?
[乗安さん]シカは昔から特別な存在だったんです。今でも広島県の宮島の厳島神社や奈良県の春日大社など神社にはシカがたくさんいて、神の使いと言い伝えられていますよね。大陸でも昔から、神の化身や豊作の象徴としてあがめられていたんです。日本でも弥生時代は「卜骨(ぼっこつ)」といって、シカの骨に焼き火ばしを当て、できたひび割れを見て神の意志を読み取って吉凶を占うということが行われていたんですよ。まさに、シカは神と人との間をつなぐものだった。北部九州では、弥生時代の死者を葬った、土器で作られたひつぎの甕棺(かめかん)にシカが描かれており、死者への鎮魂や祈りを込めて描かれたのではと推測されているんです。
ノブ
[ノブ]とすると、もしかしてこの下村遺跡のつぼも特別なものかも…?
土器復元図
[乗安さん]ええ!そう考えられるんです。その理由として、まずシカの絵であること。2つ目は、珍しいことにつぼの内側にまで紋様で飾られていること。3つ目は、今回見つかった破片はつぼの肩部の付近に当たり、全体を復元すると、高さ約60センチのかなり大型のつぼだったと推定されることです。ムラの人々が田植え前に種もみをこのつぼに入れて神に豊作を祈った、あるいは収穫時に新米を入れて神に感謝をささげた、といったふうに農業にまつわる祭事に使われた“特別なつぼ”だったのではと考えられるのです。
ゆかり
[ゆかり]その光景を想像すると、ワクワクしてきますね!しかもこのシカの絵は日本最古級の絵画だとか?
[乗安さん]はい。下村遺跡は弥生時代の中期の初頭のもの。これまで、その時期に国内で何が描かれたのかがはっきりわかる絵画は、先ほどお話しした北部九州の甕棺2例※しか見つかっていなかったんです。弥生時代はじめの米作りの伝播(でんぱ)とは時期が異なっており、弥生時代絵画の起源や伝播経路を考える上でも、この絵は今後ますます注目されると思いますよ!
ゆかり
[ゆかり]じゃ、とっても貴重な発見なんですね!!現物、見てみたいなあ…。
[乗安さん]今、1階エントランスホール横の展示室で展示中ですよ。ご案内しましょうか?
ノブ&ゆかり
[ノブ][ゆかり]ハ、ハイッ!ぜひお願いします!!
※福岡県福岡市「吉武高木(よしたけたかぎ)遺跡」、佐賀県唐津市「天神ノ元(てんじんのもと)遺跡」

展示室  「山口県埋蔵文化財センター」の展示室では今、美祢市の下村(しもむら)遺跡から出土した“国内最古級”の絵が描かれた弥生時代の土器をはじめ、昨年度のさまざまな発掘調査の成果を展示中です。所長の乗安和二三さんに発掘調査から浮かび上がってきた興味深いお話を伺ってきました!
[乗安さん]さあ、どうぞ。これが下村遺跡から出土した絵が描かれた弥生時代の土器です。
ゆかり
[ゆかり]これがそうですか!!お話を伺ってから現物を見ると、感激しちゃいますね!ん…?先生、そばに展示されている黒いものは何ですか?
炭化した植物種子
[乗安さん]下村遺跡から大量に出土したイネ・クリ・ダイズ・アズキ・ヒエなどの植物の種子の一部です。黒いのは炭化しているためです。植物の種子がこれほど大量に出土した例は珍しいんですよ。
ノブ
[ノブ]炭化した種子が大量に?何があったのかなあ。
ゆかり
[ゆかり]うーん…。例えば火事にあったとか、何か事件が起きたとか…。
炭化し、かたまって出土したイネ
[乗安さん]どうでしょうか(笑)。当時の人々にとって種子はとても貴重なもの。もし、村を移したのであれば、当然それを持って移動したはずです。下村遺跡の場合は、どういう理由かわかりませんが、種子が使えなくなったので廃棄されたと考えられます。
ゆかり
[ゆかり]先生!これはミステリーですね!!
発見された管玉の一部
[乗安さん]そうですね。下村遺跡からは、大人のお墓も見つかったんです。弥生時代、お墓は、乳児のお墓を除き、村から離れたところに作るのが普通です。珍しいことに下村遺跡では、村の一画で見つかったのです。さらにそこからは、管玉(くだたま)※が52個も出土しています。二重の首飾りができるぐらいの量で、これほどの量は県内でも数少ない出土例なんですよ。
ノブ
[ノブ]へーっ!!そうすると、埋葬された人は村長(むらおさ)だったのかもしれませんね!下村遺跡のほかにも、昨年度の発掘調査結果の中からお話を伺えませんか?
[乗安さん]国指定の史跡「萩城跡(はぎじょうせき)」の外堀(そとぼり)の発掘調査のことをお話ししましょうか。江戸時代の初めに築かれた当初の堀の幅は、20間(けん)=約36メートルありました。それが、江戸時代の中期には8間=約15メートルに狭められています。土砂で自然に埋まったとはとても考えられません。江戸時代は平和な時代だったとはいえ、外堀は重要な防衛ライン。お城は大名の威厳にもかかわります。だから、土砂が流入すれば、堀さらいを行います。それなのになぜ、藩は外堀を狭めることを許したのか…。
ノブ
[ノブ]それには何か理由があったのでは、ということですね?
[乗安さん]ええ。外堀が埋められた後、そこは整地され、町家(まちや)がつくられます。長崎に出入りしていた豪商も住んでいました。発掘調査の結果、狭められた堀の石垣の積み方が家々の間口に応じて異なっていることがわかりました。石垣は、町家の所有者がそれぞれ普請したようです。藩は、店銭(たなせん)、現代でいう不動産収入を当てにして外堀を埋めたのではないか、と私は推測しているのです。
ゆかり
[ゆかり]長州藩の不動産業ですか(笑)!そういえば毛利のお殿様って中国地方の覇者だったのに、関ヶ原の戦いで敗れて周防・長門の二か国に押し込められて以来、財政難に苦しんでいたとか…。
[乗安さん]でも、店銭をとったかどうかを裏付ける文献は見つかっていないんです。文献に出ていない史実を、発掘資料による状況証拠を積み重ねて推理していく。そこが埋蔵文化財調査の面白いところなんです。
ノブ
[ノブ]一般の人が、そうした説明を聞ける機会や発掘調査を見学できる機会はありますか?
見学の様子
[乗安さん]発掘調査の終わりごろに、現地での見学および説明会を行っています。今年度は県内5カ所の遺跡で行う予定ですので、詳しくはセンターにお問い合わせください。
ゆかり
[ゆかり]歴史って面白いですね!探偵気分を味わいに私も現地説明会へ行ってみたいです!今日はありがとうございました!
※管玉
緑色の碧玉(へきぎょく)などの宝石を竹の管の形に加工したもの。糸などで多数連ねて、ネックレスなどの装身具を作る。

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