コンテンツ2006年9月22日Vol.102 山口県広報広聴課

おもしろ山口学
雪舟等楊の魅力

【第1回】なぜ京都から山口へ移ってきたのか?

雪舟等楊
 日本美術史の中で唯一「画聖」とたたえられる水墨画の巨人、雪舟(せっしゅう)。禅僧としての正式な名前は「雪舟等楊(とうよう)」といいます。
 雪舟は、1420(応永27)年、備中の赤浜(あかはま)、現在の岡山県総社市(そうじゃし)に武士の子として生まれました。やがて近くの宝福寺(ほうふくじ)にあずけられ、その後、京都の相国寺(しょうこくじ)に入った雪舟は、約20年の間、禅宗の僧として修行しながら絵を学びます。
 京都から山口へ移ってきたのは、1454(享徳3)年前後の30代半ばのころ。なぜ山口に移ってきたのかについては、いくつかの説があります。当時の山口は現在の地方都市というイメージとはかなり異なり、明(中国)との貿易によって大きな経済力を有していた新興の国際都市で、全国でも魅力的な都市の一つでした。さらに、時代はこれから戦国の世の中に向かおうとしていた室町時代の後期。幕府の体制も不安定になっており、戦禍を逃れるために、山口に向かった公家や文化人も少なくありませんでした。雪舟もその中の一人で、山口を訪れることにより、明と貿易を行っていた有力大名の大内氏の船に乗って、水墨画のふるさと・明に渡るチャンスをうかがっていたのかもしれません。
 雪舟が山口に移ってきたことは私たちにとって幸運でした。「四季山水図(しきさんすいず)」(国宝・毛利博物館所蔵)をはじめとする36点もの真筆が都の戦禍を逃れ、今日私たちが見ることができるのも、そのおかげといってもいいかもしれません。

【第2回】さらなる飛躍を求めて明へ

雲谷庵(復元)
雲谷庵(復元)
 都の混乱を逃れて30代半ばで山口に移った雪舟は、有力大名大内氏の庇護(ひご)のもと、「雲谷庵(うんこくあん)」というアトリエで水墨画の世界に没頭していきました。山口に移り住んで10年ほどが過ぎたころ、待ちに待った明への留学のチャンスが訪れます。
 雪舟が明へ渡ったのは1467(応仁元)年、48歳のとき。足利義政(あしかがよしまさ)が派遣した2回目の遣明使節に便乗しました。一行は肥前五島(ひぜんごとう)を出航し、寧波(ニンポー)に到着。大運河をさかのぼって明の都、北京まで行き、しばらく滞在した後、同じコースを逆にたどり、東シナ海を横断して九州に戻ったようです。
 そのころの中国では、日本の繊細な画風とはうって変わって、スケールの大きいダイナミックな水墨画が全盛を極めていました。墨の濃淡を駆使してものの前後関係や複雑な空間構成を巧みに演出し、粗野なトーンで表現する、本場・中国の水墨画を目の当たりにした雪舟は、その技術を身につけて帰国。当時の日本の絵師としてただ一人、中国の風景を実際に見たことや、自分の絵が中国で認められ評判になったこと、そして本場の技術を修得したことは、雪舟が明から持ち帰った何よりの成果でした。
 足かけ3年にわたる明への修行の旅から帰ってきたのは1469(文明元)年、すでに50歳になっていました。帰国した雪舟を迎えたのは、日本中の大名の勢力を2つに分けた戦い、応仁の乱でした。この時期の雪舟の足跡については不明な点が多いのですが、混乱のため直接山口に戻ることができず、豊後(現在の大分県)に落ち着いたといわれています。そして1478(文明10)年前後、再び山口に戻って創作活動を続け、多くの代表作を生み出しています。彼の人生は60歳を過ぎてからいっそう輝きを増していったようです。

【第3回】作品の見どころ

四季山水図巻(部分)
四季山水図巻<山水長巻>(部分)
 明から帰国した雪舟は、山口を拠点に諸国を巡り、次々と作品を生み出しました。国宝に指定されているものだけでも6点と歴代の画家の中でもずば抜けて多く、その代表作の多くは明から帰国した後に描かれています。
 国宝に指定されているのは、「四季山水図巻<山水長巻>(しきさんすいずかん)<さんすいちょうかん>」(毛利博物館蔵)、「秋冬山水図(しゅうとうさんすいず)」(東京国立博物館蔵)、「山水図」(個人蔵)、「破墨山水図(はぼくさんすいず)」(東京国立博物館蔵)、「慧可断臂図(えかだんびず)」(齊年寺蔵)、「天橋立図(あまのはしだてず)」(京都国立博物館蔵)。中でも67歳のときに描いた超大作「四季山水図巻<山水長巻>」は、春、夏、秋、冬と移りゆく季節の風景を描いた作品。明で学んだ画風をかなり意識して、気合のこもった力強い筆致で描かれています。水墨画ですが、朱や緑など美しい着色も見どころの一つです。それに比べて、最晩年に描いたといわれる「天橋立図」は、肩の力が抜けた自由奔放な筆使いが魅力。神社や寺の塔、島の形までが細かく描写されており、実際には飛行機にでも乗らない限り、このように見える場所はないという興味深い謎も秘められています。
 これら国宝6点を含む全61点もの作品が、11月1日(水曜日)から30日(木曜日)の間、山口県立美術館で開催される特別企画展『雪舟への旅』に集結します。四大大作といわれる「四季山水図巻<山水長巻>」「慧可断臂図」「天橋立図」「四季花鳥図屏風(しきかちょうずびょうぶ)」(京都国立博物館蔵)は、そのスケールの大きさを目の当たりにできる絶好の機会です。また、鑑賞時には、明に渡る前、帰国後、晩年と、時代を追って筆さばきの違いを比べてみるのも、楽しみ方の一つかもしれません。

取材協力/山口県立美術館学芸員 荏開津通彦(えがいつ みちひこ)氏


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